酒の恥を書き捨て

PN.新田ひかるのあったことなかったことをつらつらと。

禁酒のススメ

平成最後の大晦日

読者諸君はどうお過ごしだろうか?

 

この画面を開いているのは他でもなく、全く書いていないことを思い出したからである。かといって年の瀬らしいことが書けるわけでもない。

というわけで今回は昔話をしようと思う。

私が人生で初めて酒をやめてもいいかなと思ったお話である。

 

酒好きの諸兄なら行きつけの居酒屋の一つや二つあるだろう。

よくいく居酒屋で一緒になった人に恵さんという方がいた。

と言ってもこれはあだ名のようなもので常連さんはみんなそう呼んでいた。

私は氏の方が年上だったこともありこの呼び方はあまりしなかったが、かといってあの時と同じ呼び方をするのも変なのでこのまま恵さんと書かせていただこう。

 

恵さんはなかなかの酒好きであった。
仕事が忙しくないときは午前で終わらせて午後はゆっくり酒を飲む。
だから「あそこのラーメン屋は2時から生ビールを出す。つまみはメンマが美味い」とか「あそこの喫茶店は頼めばカクテル(実際はただのレモンハイ)を出してくれる」なんて言う昼飲み情報を良くくれたものだ。
その話を聞いてラーメン屋で酒を飲み、喫茶店でレモンハイを飲んだりと言うことをしたものだが、それはまた別の話。

 

そういえば初めてお会いした時、恵さんは私と同じく喫煙者だった。
だった。というのは禁煙を始められたからで、ある時からきっぱりと吸わなくなったそうだ。
そういうのも親近感が湧いたひとつなのかもしれない。

 

最後に話を聞いたときはガストのハッピーアワーが人類を幸せにすると言う文字にするととてもとても下らない話だが、お話の上手い方でとても面白く話をしていたのが今でも思い出せる。

最後に会ってから数ヶ月ほど。

 

ここ最近お会いしないなと思っていた恵さんと久々にいつもの酒場で再会した。
どうやら会社の部下をツレて飲んでいるところだったようだ。
ツレの方が席を立った時に思わず声をかけた。

 

最近お会いしませんね。

 

意外な答えが返ってきた。

 

酒を飲むのやめたんです。

 

あの恵さんが酒をやめた。酒のために半休をとっているような人間である。
酒の海を優雅に泳いでいるような、そんな人が酒をやめたと言う。
しかしそれならなぜ酒場にいるのか。手にあるのは確かに恵さんお気に入りの焼酎の水割りである。酒を飲むのをやめるのをやめたのか?驚いた私の反応に気がついたのか、すかさず恵さんは続けた。

 

いやいや、酒を飲むのをやめたと言っても自宅で飲んだり一人で飲んだりってことでね、誘われたり付き合いで飲むのまではやめてないんです。たまに飲むと美味しいですね。

 

しかし昼間から酒を飲むのを楽しみにしている方だ。
そんな簡単にやめられるのかと聞いた。
恵さんが言うにはやめられるものなんだそうだ。

 

毎日タバコを1箱。ビールを2本。それで1,000円。
休肝日やタバコを吸わない日を考えても月に3万はかかる。
これが年間になれば36万円。
会社の定年までとは言わなくても、10年やめれば360万円。
それだけ貯まるはず。そうすれば定年して家族で海外旅行、どこにでも自由に行けるはず。

それを考えれば続けられる。と語ってくれた。
いまは趣味で始めたジョギングが楽しくて、定年してホノルルマラソンを走ると言うのが目標になったという。

 

最後に恵さんはこう続けた。

 

酒を飲めなかった時期が人生にはある。
高校大学時代、成人になる前なんて酒は飲まなかったじゃないですか。
でもあの時期なんの不自由もなく生きてたのに、今酒飲まないと、タバコを吸わないと不自由するってのはやっぱりおかしいんですよ。

 

「昔当たり前だったことが今できないなんてことはないんです。
そう思えば、酒もタバコもすぐやめられますよ。」

 

一理あるな。その通りかもしれない。
恵さんには目標がある。それが酒やタバコをやめさせる後押しをしているのはあるだろう。

 

それを差し引いてもこの言葉が深く刺さったのを今でも忘れない。
ふといまそのことを思い出し、来たる新年は。平成じゃない新しい時代は酒をやめるか。
そう思いながら、酎ハイを傾けつつキーボードを走らせている。